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掏摸 中村文則

日本の現代文学において、村上春樹さん以降、質人気共に最も充実した作家といえば、きっと中村文則さんでしょう。素晴らしい作品がたくさんありますけれど、最初に読むなら、『掏摸』をお勧めします。 2010年に大江健三郎賞を受賞した、――実際の発刊は2009年…

熱帯魚 吉田修一

現代日本の小説家で女性の天才タイプは多いと思いますけど、男性では珍しいのが吉田修一だと僕は思っています。吉田という人は天才だと思って疑いません。初期の頃から作風は変化していっていますが、――分岐点は『悪人』(2007)だったでしょう――、でも、吉…

傷口にはウオッカ 大道珠貴

僕が大道珠貴でいちばん好きなのが『傷口にはウォッカ』(2005)という作品です。彼女が2003年に芥川賞を受賞したとき、その受賞作の「しょっぱいドライブ」はけっこう一般的には酷評されたみたいですが、以来僕はたちまち大道文学の虜になりました。それから…

図書準備室 田中慎弥

ある種奇抜な芥川賞記者会見?で有名になった田中慎弥のデビュー作を含む短篇集。彼は「共食い」(2011)で第146回芥川賞を受賞しましたが、初めて芥川賞候補になったのが、ここに収められている、彼のデビュー後二作目となる「図書準備室」(2006)です。そ…

ロックンロールミシン 鈴木清剛

1998年に上梓された第十二回三島由紀夫賞受賞作。作家のお名前はずっと知っていて、読んでみたかった方だったんですけれど、彼の作品に触れたのは僕は意外と遅かった。 この作品には、けだるい二十代特有の若者の生態が描かれています。タイトルもいかにもな…

流しのしたの骨 江國香織

江國香織さんの著作の中ではあまり読まれていない本みたいで、意外です。ぼくはこれが彼女の最高傑作だと思っているんです。 この作品を読んだとき、「新しい文学」がこうしてはじまっていくんだな、とそんな新鮮で胸躍る感覚を発見した気がしました。江國香…

ナチュラル・ウーマン 松浦理英子

松浦理英子は寡作な作家で、出版された作品はそれほど多くありません。現代を担う作家なのか、というのも少し微妙かもしれません。存在的にアウトサイダーであり、幅広く読まれている作家だとは到底いいがたいです。 代表的長編作である『親指Pの修業時代』…

ベッドタイムアイズ・指の戯れ・ジェシーの背骨 山田詠美

山田詠美26歳時のデビュー作。「ベッドタイムアイズ」(1985)は彼女の文芸誌の「文藝賞受賞作」で、当時選考委員のひとりであった文芸評論家の故江 藤淳がすごく賞賛したという話を聞いた覚えがあり、ぼくも読んでみてその作品の高さと個性の豊かさに驚き…

生ける屍の死 山口雅也

ぼくは正直いってほとんどミステリーを読まないのですが、珍しくミステリー本、それも本格といわれる推理小説のレビューです。 いわゆる探偵が出てきて謎を解く、みたいなやつですね。クライムサスペンス系や、レイモンド・チャンドラーなんかは、すごく文学…

八日目の蝉 角田光代

角田光代は今や多くの書籍が映画化され、誰もが知る売れっ子作家ですが、ある時期を境に決定的に変わった、とみられる作品があり ます。それが直木賞候補作になり、後に小泉今日子主演で映画化もされた2002年に発表された『空中庭園』です。これはあるひとつ…

村上龍映画小説集 村上龍

村上龍という作家は、世間的に幅広く読まれた、中学生へ向けた仕事について書かれた書籍『13のためのハローワーク』(2003)や、TVの「カンブリア宮殿」の司会の印象から、なんだかもう文化人的なイメージが定着してしまっている感がありますが、彼は紛れもな…