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ヘレン・シャルフベック 魂のまなざし 展に行ってきました。

 

 東京藝術大学大学美術館で開催されているヘレン・シャルフベック展に行ってきました。

 初の回顧展ということだったんですが、実際恥ずかしながら、ぼくは彼女の名前を知りませんでした。フィンランドではとても有名な画家のようです。

 

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 3歳のときに事故に遭い、それ以来生涯杖を手放せなくなる人生になりました。

 しかし、意外と絵にはそのような悲壮感は現れていません。彼女は絵を描くことで、自分の障害を乗り越えたのでしょう。そしてその魂の眼差しは、とても厳しいものです。それが彼女の絵によく表れています。

 

helene-fin.exhn.jp

 

 1862に年に生まれています。印象派の画家たちのひとつ下の世代、キュビズムらの画家たちのひとつ上の世代あたりですね。

 パリへ留学している時代に、さまざまな巨匠たちの影響を受けて、消化していった彼女の作品は、とりわけジェームズ・マクニール・ホイッスラーの影響が色濃いと思いました。ぼくはホイッスラーがとても好きなので、それは顕著にわかりました。マネなどの印象派の影響もやはり相当受けたようです。

 風景画よりも、人物画、さらに自画像のほうがよいように思えました。それは彼女の画家としての視線が、すごく内省的に働いているせいだ、という思いがします。恋焦がれていた彼が結婚してしまったあとの自画像には、痛々しいカンバスの傷跡があったりしましたけれど、とにかく画家としての眼差しに揺るぎないものがあるのが、彼女の絵の特質でしょう。絵を描くという行為は、自分と向き合う行為だ、というような美術作品です。

 

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「黒い背景の自画像」 1915年 油彩・カンヴァス フィンランド国立アテネウム美術館蔵

 これはホテルでひとり暮らしをはじめた晩年の頃の作品で、背景が黒く塗りつぶされています。「死」を見つめていく、やはり揺るぎない画家の魂が感じられる、彼女の自画像の代表作です。

 晩年は17世紀のスペインの巨匠エル・グレコの影響が顕著になります。いくつか展示されていたのですが、観てすぐにわかりました。しかし実物を観たからではなく、図版を観て影響を受けたとのことです。自分に通じる強い感受性を見出したのかもしれません。

 音声ガイドのナビゲーターは女優の小林聡美さんでした。印象派の絵が好きな方は行ってみていい展覧会じゃないかな、と思います。東京藝大は久しぶりに行きましたけれど、とてもいい美術館ですね。

 

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 「パン屋」1887年 油彩・カンヴァス オストロボスニア美術館蔵

 個人的にはこの絵がいちばん気に入りました。マネの色彩感覚や、ホイッスラーの陰影方法など、彼女の技法が究められている一作品で、純粋に絵として素晴らしいものだといえます。