読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

No Museum, No Life?―これからの美術館事典 に行ってきました。

 

 東京国立近代美術館で開催されている「No Museum, No Life?―これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」に行ってきました。

 タイトルを聞くと、ちょっと変わった展覧会のように思えますが、内容は、美術館というものに改めて焦点をあてて、「鑑賞」ということを作品といっしょに考えてみましょう、というものです。

 展覧会自体がキーワードに沿ったひとつの美術館辞典のようになっており、アルファベット順に、Aなら「Art Museum」や「Archive」といったテーマに沿って展示品を並べ、Lの「Light」ならライトにまつわる作品、Nなら「Naked/Nude」で裸体にまつわる作品というように、芸術作品を通して、美術館の新たな発見に鑑賞者を誘っていく構成になっています。

 最後のzでは「Zero」というテーマで、美術館の最終的な関係性を問いかけてきます。その隣の「You」という項目では、鏡だけがぽつんとあり、自分自身の姿のみを映すという試みがなされて、主体は作品だけではなく、鑑賞者であるわたしたちも含めて総体なのだ、そんなふうに深く考えさせてくれる展覧会内容になっています。

 言葉だけ聞くと、まあ確かに、難しそうなんですけど、行ってみると、ぜんぜんそんなことはありません。いきなり最初にあるのはアンリ・ルソーのこの絵ですし笑

 

f:id:mannequinboy:20150709184914j:plain

 アンリ・ルソー 「第22回アンデパンダン展に参加するよう芸術家を導く自由の女神」(明治38-39年)

 ぼくが気に入ったのは、マックス・エルンストの「人間のかたちをしたフィギュア(像)」(1931)、クロード・ヴィアラ「無題」(1974)、ジャン・デュビュッフェ「ご婦人のからだ(「ぼさぼさ髪」)」(1956)、アンディ・ウォホール「4フィートの花」(1964)、クリスト「包まれた缶」(1958)、辺りですかね。フランシスコ・デ・ゴヤのベラスケスを模写した2点の版画もよかったし、マルセル・デュシャンも5点ほどありました。

 クリストの作品はWの「Wrap」の項目にもちろん展示されてあったわけですが、もともとクリストは、なにかを布等で覆ってしまう芸術スタイルを特徴としているアーティストで、空き缶を布で包んで、ペンキラッカーして、ロープで結んだだけのこの初期を代表する、「粗末」としかいえない彼らの傑作は、その美術とはなにか、という哲学的なテーマより、単にマテリアルなものとして芸術的に美しい存在性を放っているところが魅力であって、このような作品が今回の企画展自体をとても象徴しているようにも、またぼくには思えました。

 豊富な展示作品だったとは言い難いですけれど、作品が的確で、会自体は素晴らしいものだったと思います。

 

f:id:mannequinboy:20150709185155j:plain

www.momat.go.jp

 東京国立近代美術館は、とにかく所蔵作品が充実している都内屈指の美術館でしょうね。ストロボを焚かなければ写真撮影が可能で、開放的で自由なイメージが満ちています。皇居を眺めてゆっくり寛げる休憩スペースもあり、ぼくはここがもっとも外国の美術館に雰囲気が似ていると思っています。実際に海外の来客者数が他の都内の美術館より多いと、今回も感じました。

               ※               ※

 所蔵作品による「MOMATコレクション」展についてもレビューします。

 今回の東京国立近代美術館の所蔵作品のテーマは「誰がためにたたかうか?」といった、やはりちょっと変わったものでした。これは漫画家の石ノ森章太郎の『サイボーグ009』(第2シリーズ)の主題歌から発想されたものらしく、平和のために戦う、といいながらも、実際それは矛盾したものであるのは明らかで、この所蔵作品の企画も、テーマ自体は違っても、企画展と同じく、鑑賞者に「問題」をいっしょに考えるもののように、非常に巧みに意図されている気がしました。

 たとえば細江英公による写真「薔薇刑」(1961)から何作品か展示されてあって、これは作家の三島由紀夫を撮影した作品集なんですけれども、その隣に森村泰昌による、市ヶ谷駐屯地において三島が自決直前に行った演説のパロディ化した映像作品が流れていたりする試みは、とてもユニークなものだとしかいえないです。

 草間彌生の初期作品が2点展示されてあって、「集積の大地」(1910)は、ぼくは初めて観たんですけど、これはすごくよかったなあ。あと、藤田嗣治をたぶん世界でいちばん所蔵しているのは、この東京国立近代美術館でしょうけど、今回もたくさん展示されてあって、ぼくの好きな「猫」もありました! 藤田嗣治も実は戦争をテーマにした絵画をけっこう描いているんですね。

 どうやら9月に、所蔵する藤田全作品を展示する企画展を、東京国立近代美術館は準備中らしいです。

 

f:id:mannequinboy:20150709185532j:plain

 藤田嗣治 「猫」 (明治15年)

 美術館好きなら、行ってみて損はない展覧会だとぼくは思います。岸田劉生とか、安井曾太郎とか、萬鉄五郎とか、近代の日本の洋画家や日本画の名作もとにかくたくさんあります。入場料¥1000だし、金曜は20時までやってます。行かない予定だったけど、行ってよかったなとぼくは思いました。