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エリック・サティとその時代展 へ行ってきました。

美術展覧会レビュー

 

 渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムで開催されている「異端の作家 エリック・サティとその時代展」―ERIK SATIE ET SON TEMPS―に行ってきました。

 エリック・サティ(1866-1925)って、皆名前くらいは知っていると思うんですけど、近代音楽と現代音楽の間にまたがるような人で、作曲方法にしても、それまでとは異質な前衛的な音楽を作ったフランスの作曲家です。面白いのは、同じ音楽仲間同志に留まらず、あらゆる芸術家たちに愛されたということで、サティは音楽史的にはちょうど20世紀の転換期に位置づけられますが、同じ頃美術界隈でも、マネやモネたちの印象派による芸術革命がすでに起っていました。サティもそれらのアーティストたちの運動と無縁でなかったわけです。

 近代音楽を変革したといわれる、同世代のクロード・ドビュッシー(1862-1918)とモーリス・ラヴェル(1875-1937)も、自分たちもサティに影響を受けた、と公言してはばかりません。

 この展覧会ではそんな愛すべきサティとゆかりの深い作家やアーティストたちの作品、さらに彼の音楽(最初に「ジムノペディ」が流れてきます笑)、も交えて、順を追って紹介していくもので、当時のフランスのアートがどのようなものであったか、それを追体験できるような構成になっています。

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www.bunkamura.co.jp

 まず目に飛び込んでくるのは、誰もが知っている、あのアンリ・ド・トゥルーズ・ロートレックの「ムーラン・ルージュ」です! やっぱりロートレックのポスターは最高です。

 サティは「エコール・ド・パリ」の画家たちで有名なモンマルトルで活躍した人で、――後にちゃんと学校に行って音楽理論は学ぶわけですが――、もともとピアノも作曲方法も独学であり、場末の酒場のピアノ弾きみたいな人だったんですね笑、影絵劇の指揮者から、キャリアは出発しています。そういうある種いかがわしいといってもいい、キャバレーやカフェで繰り広げられるお芝居でピアノを弾いていた当時の公演のポスターが、最初に飾ってあります。

 ぼくが気に入ったのは、もちろんロートレックの「ムーラン・ルージュ」と、アレクサンドル・スタンランの「シャ・ノワール座巡回公演」もよかったですね。猫好きなんで笑

 

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アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック 「ムーラン・ルージュ」 1891年

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テオフィル=アレクサンドル・スタンラン 「ロドルフ・サリスと巧妙なシャ・ノワール一座近日来演」(部分) 1896年

 サティが音楽を担当、作家のジャン・コクトーが台本、パブロ・ピカソが舞台美術という、今考えると信じられない豪華陣で劇を作ったものがあります。(『パラード』といって、この2007年版の再録講演が、展覧会では映像で流れています)。この紹介もよかったです。さらにジョルジュ・ブラックやフランシス・ピカビアとか、とにかくアーティストたちに愛され、影響を与えまくった人で、ぼくが愛してやまない彫刻家コンスタンティンブランクーシとも交友をとても深めていたわけで、なんと、ブランクーシがサティを撮影した写真が展示されてあって、ぼくはこれは初めて観ました。こんなのがあったんですか? もちろんポストカード買って部屋に早速飾りました!

 

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コンスタンティンブランクーシ 「エリック・サティの肖像」 1922年

 フォーヴィズムを代表する画家アンドレ・ドランもとてもサティを賞賛していたらしく、いっしょに仕事をしたかったらしいですけれど、残念なことに、サティは亡くなってしまいます。そのあとで彼の構想に基づいて描かれた作品群が9点ほどあって、これも素晴らしかった。

 

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 アンドレ・ドラン 「『ジュヌヴィエーヴ・ド・ブラバン』のための衣装のデザイン画、2人の兵士/ティモレオン」(部分) 1926年

「『アルシダンス』のための衣装のデザイン画、モンスター(部分)」 1922年

「『ジャック・イン・ザ・ボックス』のための衣装のデザイン画(部分)」 1926年

               ※               ※

 ぼくはエリック・サティの音楽は普通に好きなので、観に行って、まったく退屈しませんでしたけれど、予備知識がなくても、楽しめる展覧会だと思います。当時のフランスの芸術がどのようなものだったのか。それを追体験できる感じがあります。ただ美術品は少な目なので、そっちを期待していくと、物足りないかもしれません。

 渋谷Bunkamuraはミュージアムやレストランも充実していて、とにかくオシャレでアートなので笑、デートや余暇を楽しむには最高でしょう。開館は10時-19時で、金土は21時までやってます。8/31までやっていますので、夏休み中暇があれば、足を運んでみてはいかがでしょうか。

 最後は、ピアノ高橋アキ、朗読エリック・ヴィエルによる、サティの「スポーツと気晴らし」の音楽と映像が流れ、展示会は締めくくられています。

 

Complete Solo Piano

Complete Solo Piano

 

  サティ作品集でぼくのお勧めは、フランス人のピアニスト、ジャン=イヴ・ティボーデによるもの。邦盤はもう品切れみたいですが、輸入盤なら普通に売っているみたいです。