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琳派と秋の彩り 山種美術館へ行ってきました

 

 東京広尾の山種美術館で開催されている「特別展 琳派400年記念 琳派と秋の彩り」に行ってきました。

 琳派は桃山時代後期から江戸時代にかけて活躍した俵屋宗達本阿弥光悦を祖とした、極めて日本独特な美術のひとつの流派です。ふたりの後に尾形光琳、乾山兄弟、さらに酒井抱一、鈴木其一に至って、ひとつの完成美を見たといわれています。

 明治になっても、その技法や思想は受け継がれ、多くの日本画家たちに今なお絶大な影響力を持っています。繊細な装飾性、独特な平面的構成、季節感をモチーフとした題材などが特徴ですが、ちょうど宗達が京都の鷹峯に「芸術村」を開いて、今年で400年目にあたるということが、このような展示会が今回催されたきっかけらしいです。

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開催中の展覧会 - 山種美術館

 会場は三つに分かれています。「第1章 琳派の四季」では、宗達、光悦、乾山、抱一、其一ら、代表的琳派の絵師たちの作品がずらりと展示されています。「第2章 琳派に学ぶ」では、明治以降の琳派に学んだとされる日本画家たちの作品が展示され、「第3章 秋の彩り」では、琳派が好んで用いた「秋の季節感」にちなんだ、やはり近代の日本画の名品並んでいます。

 今回の展覧会の重要性は、山種美が所蔵する作品に留まらず、個人蔵の作品がいくつか展示されている点です。琳派の展示会はけっこう開催されますが、これまで観るきっかけがなかった作品も、今回何点かきっとあると思います。

 たとえば、今回ぼくにとって驚きだったのは、田中抱二(1814~1884)の作品です。田中抱二は酒井抱一の最晩年の弟子なんですけれど、琳派に区分される絵師たちの中でも比較的マイナーで、というか画壇でも、ほとんど知られていない絵師といってよいです。展示されていたのは「萩兎図」(19世紀・江戸-明治)という掛け軸一点だけでしたが、「ほのぼのとした味わい」の作品で、とてもいいものでした。抒情性が際立つ師匠の抱一より、光琳の弟子だった中村芳中尾形乾山に近い作風で、萩は装飾的に描かれながら動物はとても愛らしいという、独特なスタイルを起立させた、とても素敵な作品で、感動しました。

 さらに宗達によるものだと伝えられている「槙楓図」は、これもぼくは初見だったんですが、見てわかるように、後の光琳に決定的に影響を与えたと思われる作品で、一見の価値大ありです。

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 伝 俵屋宗達 「槙楓図」 (17世紀・江戸)

 展覧会は宗達の傑作「鹿に月図」(17世紀・江戸時代)からはじまり、年代順に琳派の作品群を追っていきます。最後まで観終わった後、数百年を渡って受け継がれた「歴史」を、鑑賞者は驚きを持って必ず感じるはずです。それは日本の歴史の重みといってよいかもしれません。

 琳派技法の特質として、輪郭線を用いず墨の濃淡のみで描く「たらし込み」がありますが、これは自然や情緒を表現しようとする日本独自の思想から発想され、洗練されていった表現です。さらに題材に用いられる自然や動物、季節感の移ろいも、日本人独自の感受性とは切り離せません。この「日本的」ともいえる思想/感受性を表現したのは、日本の場合は最初文学であり、日本の画家たちがこぞって伊勢や源氏らの物語をモチーフに使ったのは、なによりそこにこそ日本の原点があったからにほかなりません。

 琳派の絵師たちは、もっともそのことに敏感に反応したアーティストだったことが証明されたような、今回はそんな展覧会だったように思います。

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 酒井抱一 「秋草鶉図」 (19世紀・江戸)

 山種は小さな美術館なのですが、江戸から近代にかけての日本画のコレクションは、素晴らしいものがあります。ぼくの大好きな福田平八郎の作品も、東京だと山種くらいしか鑑賞することができないので、今回の展覧会も、ぼくにとってはとても貴重なものでした。

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 福田平八郎 「彩秋」 (1943・昭和18年)

 会期は9/1(日)~10/25(日)。日本美術は恒例の前期後期での展示変えがありますので、HPをご覧になってから、お出かけするのがよいと思います。