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ザ・クラッシュの「ハマースミス宮殿の白人」

 

 ぼくは無条件に音楽評論家を尊敬している。たくさん好きな人がいるんだけれど、久保憲司さんは、ちょっと特別だ。1980年代にイギリスのマンチェスターに渡英して、実際にリアルに現地でパンク~ニュー・ウェーヴのムーヴメントを体感した人だ。

 はっきりいってライターとしての文章は、あまり上手いとはいえない笑(すいません)

 でもそこにはその都度その都度に出会った瞬間のエモーショナルなものがある。それが限りなく、ぼくが考えるロックに近い言葉なのだ。

 AMPというネットの音楽サイトでコラムを担当されていて、ジョイ・ディヴィジョンの曲ベスト10とか、ノイズ・ミュージックのベスト10とか、いろいろ書かれているんだけれど、ザ・クラッシュ(1970年代後半から80年代にかけて活躍したパンクバンド)の「ハマースミス宮殿の白人」について語っている文章があって、これが素晴らしい。

ampmusic.jp

 なんで、突然「ハマースミス宮殿の白人」? かというと、ちょうど今日深夜ラジオを聴いていたら、この曲が流れてきたからだ。それでこの久保さんの記事のことも、思いだしたのだ。

 ザ・クラッシュは、早々と解散してしまったセックス・ピストルズと違って、「パンク」とは何かを身を持ってその後も10年近くに渡り体現していったパンク・バンドだった。いち早くパンクとレゲエの共通姿勢を見つけ、とりわけメイン・ヴォーカリストジョー・ストラマーはレゲエの曲を愛していた。しかし、意外とジョーの父親は外交官であったり、いわゆる大勢のパンク・ロッカーたちのように「底辺の労働者階級者」ではなかった。クラッシュは政治的なメッセージを誰よりも歌ったバンドだったんだけれど、後に、「クラッシュの歌詞はぜんぶ相棒のミックが書いたんだよ」的なことを、皮肉っぽくジョーはいったりしている。

「ハマースミス宮殿の白人」は、この記事で久保さんがおっしゃられているように、幻想の崩壊、が歌われている。極めて文学的な歌詞内容であり、白人がやったレゲエナンバーとしては最高峰だろう。表現が真に迫っている。ジョー自身このナンバーをとても愛していた、とジョーが亡くなったとき、ミックはいっていた。

 この歌は悲しくて切ないけれども、元気をもらえる曲だ。ぼくはクラッシュで一曲選べ、といわれたら、この曲を選ぶと思う。ここに歌われているような「幻想の崩壊」を、さらに身を持って体現したのは、たぶんその後のジョイ・ディヴィジョンだろう。「ぼくらは氷の時代を生きている」と歌い、フロントマンのイアン・カーティスは、さらにパンク・ムーヴメントの幻想に打ち砕かれて、自殺してしまった。

 誰もが自分の生きる場所と、死に場所を探して、今日を生きている。