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浮世絵から写真へ ―視覚の文明開化 へ行ってきました

 

 両国の江戸東京博物館で開催されている特別展「浮世絵から写真へ ―視覚の文明開化」へ行ってきました。

 江戸東京博物館は「江戸期」の様々な美術品や歴史資料を所蔵し展覧する博物館です。今回は幕末期に渡来した「写真」という、当時の最新型技術のファクターを通して、「日本の近代化」の一面に光を与えようとした展覧会です。

 江戸末期に大成熟と化した化政文化の特徴は、一言でいえば、大量生産技術にあったと思いますが、印刷技術が大幅に発展したことで、戯作本でも浮世絵でも流通が飛躍的に拡大することで庶民文化が花を開きました。その技術革新において、人々に流布するアイテムも変化していき、たとえば、幕府大名が眺める大きな屏風から、浮世絵という風俗画の誕生があり、さらに浮世絵を想像してみればすぐに思い当たることだと思いますが、圧倒的にそこに描かれたものは、名所絵と美人画が主です。そして写真が生まれます。面白いことですが、題材に関しては、当時写真も浮世絵も共通していた、という歴史的事実があるのです。

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www.edo-tokyo-museum.or.jp

 展示は「プロローグ」「第1章」「第2章」「第3章」「エピローグ」に分れています。

「第1章」で、最初に目の当たりにするのは、誰もが知っている、歌川広重の「名所江戸百景 亀戸梅屋敷」です。圧倒的です。

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 歌川広重 「名所江戸百景 亀戸梅屋敷」 多色木版 1857年(安政4年)

 さらに渓斎英泉の「四季美人図」も、素晴らしい。これ見るためだけでも、行ってもいいと思います笑。

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 渓斎英泉の「四季美人図・冬」 絹本着色・軸 1830~44年(天保期)

 展示は絵と写真が交互に展示される内容なんですけど、この章でぼくがちょっと驚いたのは、若かりし頃の勝海舟福沢諭吉の肖像写真が、展示されてあったことで、福沢諭吉とか、お札になった、お年を召された顔しか思い浮かばないじゃないですか。いろんな有名人の肖像写真が飾られてあります。四年六か月の幼少の、後に作家となる永井荷風の肖像写真もあったりして、とても珍しいものだと思いました。文学好きはチェックでしょう。

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「第2章」では、写真、という新たな技術を取り入れた浮世絵を紹介していて、写真がいかに当時の絵師たちにも影響をもたらしたかがわかる展示内容です。

 歌川芳藤の「開化旧弊荒廃くらべ」という多色木版の作品が最初に展示されてあるんですが、題材が、写真と絵との食うか食われるかの闘争が擬人化や風刺を通して描かれた面白い作品で、これを観ると、当時いかに「写真」に絵師たちが慄きを持って臨んでいたかがわかる歴史的資料だと思います。

 個人的には、小林清親の作品はやはりよくて、いつ見ても独特な存在感を放っているな、と感嘆しました。清親はほんとんど油絵のように描いています。「カンバスに猫」(多色木版・1879)「鶏にトンボ」(多色木版・1879年)という、ほとんど油絵としか思えない作品が、「第3章」のほうにあります。

 写真のほうでは、小川一眞の「凌雲閣百美人」が面白いもので、芸子を百人写し、当時写真はモノクロでしたから、これに浮世絵の鮮やかさを再現するように、彩色を施している、いわゆる「ブロマイド」なんですが、この肖像写真が、当時は飛ぶように売れたらしいです。

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 小川一眞 「凌雲閣百美人」 (明治24年)

 そして実はこれには元ネタがあって笑、歌川国貞が「江戸名所 百人美女」というものを描いていて、同じ発想なんです。同場所に展示されてあるんです。

 酒井抱一ファンのぼくとしては、抱一が編纂した「光琳百図」、――光琳の絵を図録化したものですが――、これも資料として展示されてあって、これは何度も観ていたんですけど、「乾山遺墨」という、乾山の図録まで彼は描いていて、これは初見で、びっくりしました。彼の琳派に対する愛着は半端ではないものですね。

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「第3章」では、油絵、ガラス絵、泥絵が展示されています。当時最も流行ったのが、写真油絵というもので、モノクロ写真に彩色を施すものです。横山松三郎という人がこれを苦労に苦労を重ねて成し遂げるわけですが、それを継承した弟子のひとりであった小豆澤亮一はすぐに没し、写真油絵なるものは、歴史的に忘れ去られていくことになってしまったようです。

「エピローグ」は、両国らしく、相撲で〆です笑 白鴎関ですね。

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 江戸東京博物館らしい特別展でした。ときどきここは面白い展示会をやります。今回も味わい深い展示会だったと思います。

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