読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ゴーギャンとポン=タヴァンの画家たち展へ行ってきました

 

 パナソニック汐留ミュージアムで開催されている「ゴーギャンとポン=タヴァンの画家たち展」へ行ってきました。ぼくがゴーギャン展を観るのは初めてです。ただ今回のは個人展ではありません。

 どういう趣旨の展覧会かというと、ゴーギャンがパリを離れ、タヒチに渡って絵を描いたことは有名ですが、それ以前に、彼の絵画革新の「契機」となった、フランスのブルターニュに滞在した期間に描かれた作品と、さらにそこに同調した画家たちの作品が集められた内容です。

 フランスの西に位置するポン・タヴァンという小さな村は、明るい光に溢れ、古き良き伝統の残った場所だったようです。ゴーギャンはこの牧歌的な村を気に入り、ここで多くの仲間たちと出会い、新しい絵画制作に取りくむことになったのです。

 ざっとポール・ゴーギャンに関する絵画史的な立ち位置をおさらいしておきましょう。大事なんです。 

f:id:mannequinboy:20151119184352j:plain

panasonic.co.jp

f:id:mannequinboy:20151119185127j:plain

 これは展覧会で配布されていた鑑賞用ワークシートに記された「関係図」なんですけど、これを観ると、ゴーギャンの絵画史的ポジション、今回の「ポン=タヴァン派」と呼ばれる画家たちのそれもすごくわかりやすい、と思います。

 ゴーギャンは、ポール・セザンヌフィンセント・ファン・ゴッホらと共に絵画史的に「後期印象派」のひとりと呼ばれ、後の画家たちにも多大な影響を及ぼしましたが、まずマネが切り開いた、それまでとは異質な絵画に、決定的な手法で登場したのがモネで、「印象派」という呼称は、そのモネの描いた「印象、日の出」という作品から由来しています。

 印象派には、ほかにもピサロやドガ、ルノワールシスレーなど多くの巨匠たちがいるのですが、セザンヌゴッホゴーギャンらは、その新しい絵画である印象派でも飽き足らず、それよりさらなる先へ行こうと、それぞれに絵画の革新をもたらすため苦闘の道を歩むことになります。

f:id:mannequinboy:20151119190629j:plain

 ポール・ゴーギャン 「2人の子供」 (1889年)

 ゴーギャンが確立していった独自の絵画技法とは、ざっくりいっちゃうと、題材の簡略化と平面的な構図、明確な輪郭線、明確な主題の放棄、といったところでしょうか。最初にゴーギャンの独自の作風が起立したとされる「説教のあとの幻影・天使と闘うヤコブ」(1888)という有名な作品があるんですが、現実と幻影が対比され、その平面的な構図と彩色において、聖と俗、現実と虚構がひとつのカンバスに総合されています。

 よって、ゴーギャンが確立した絵画は「総合主義」と呼ばれます。

「説教のあとの幻影」は旧約聖書から引用された題材が用いられているにもかかわらず、まったく画家の内的な観念によって、その感じられたものを表現する、という姿勢で描かれ、その新しい手法によって、当時の絵画史に絶大な衝撃を与えたといってよいです。

 しかし、その年の5月にパリ万博に合わせて開催された「印象主義および総合主義のグループの絵画」展で、彼の作品は一点も売れなかったのです。

 これは「後期印象派」と呼ばれる画家たち、セザンヌも、ゴッホも同様で、セザンヌは晩年に至るまで、ゴーギャンも長きに渡ってぜんぜん認められなかった画家といってよいです。ゴッホに至っては死んだあとも評価は思わしくなく、生前に売れた絵はたったの一枚だったことは、とても有名な話です。

f:id:mannequinboy:20151119192742j:plain

 ポール・セリュジェ 「呪文或いは聖なる森」 (1891年)

 なぜ今回このような企画展が開催されたか。

 このような歴史的内容を吟味していくと、それが理解されてくるように思えてくるわけです。

 ゴーギャンの新しい絵画は伝統的なアカデミズムからこきおろされ、大衆の支持も受けず、絵も売れませんでしたが、彼に同調する新しい画家たちが大勢いて、その「先進性」は一部で熟成していたのです。

 今回は「ポン=タヴァンの画家たち展」であり、ゴーギャン以外の「総合主義」に括られるほかの画家たちの作品も多く展示されてあります。エミール・ベルナールはゴーギャンと共に「総合主義」を牽引した創始者のひとりであり、今回は展示が多数あります。個人的にはポール・セリュジェの絵画がとてもよくて、ほかにもジョルジュ・ラコンプ、ロドリック・オコナーらの作品もよかったと思います。

f:id:mannequinboy:20151119193306j:plain

 モーリス・ドニ 「ヒヤシンスの中のオルフェのためのエスキス」

ナビ派」の画家たちの作品も展示されてあり、彼らもまたゴーギャンらの「総合主義」の思想に非常に影響を受けて絵画制作に取りくんだ画家たちなのです。モーリス・ドニ、ポール・セリュジエ、ピエール・ボナールらが有名でしょう。

f:id:mannequinboy:20151119193715j:plain

 ジョルジュ・ルオー 「秋の夜景」 (1952年)

 汐留ミュージアムは出光美術館と同じく、ルオーのみが数点展示されてある部屋が館内にあります。ルオーのあの黒を基調とした、異様なまでの厚塗りで描かれた絵画作品は、自らの宗教的ヴィジョンを開眼させるものですが、この晩年に製作された比較的大きな「秋の夜景」という作品は本当に傑作なので、一度汐留ミュージアムへ足を運ぶことを強くお勧めします。

 現在ちょうど出光美で「ルオー展」が開催されているんですけど、もうルオーは何回も観ているので、行かなくていいかな、と思っていたところでしたが、これを観て、ダメダメ、行かなきゃ、ってぼくは今思っている次第です。