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逆境の絵師 久隅守景 サントリー美術館へ行ってきました その2

美術展覧会レビュー

 

 六本木・東京ミッドタウンのガレリア3Fで開催されている「逆境の絵師 久隅守景 親しきものへのまなざし」展へ行ってきました。訪問は、これで二度目です。なかなか守景の個人展ってないですし、展示期間中、細かく分けると、六度の展示替えがあったので、もう一度くらい行ってみようと思ったので、足を運んだ次第です。

 10月に行ったときのレビューはこちらにあります。久隅守景という絵師がどんな人だったのか、それらのことは「その1」のほうに書いてあります。

mannequinboy.hatenablog.com

 以前と大幅な展示替えが、やはりされていました。

 いちばんは、守景の最も有名な、国宝に指定されている「納涼図屏風」(二曲一隻・江戸時代・17世紀)が展示されていなかったことでしょう。今回見落とされた方は、東京国立博物館にあるので、機会があるときに訪れてみることをお勧めします。

「第一章 狩野派からの出発」「第二章 四季耕作図の世界」「第三章 晩年期の佐作品 ―加賀から京都へ」「第四章 守景の機知 ―人物・動物・植物」「第五章 守景の子供たち ―雪信・彦十郎」と、展示内容は変わってはいません。今回目を見張る作品は「耕作図」の一点と、「晩年」に書かれた、やはり「耕作図」一点で、この二作品についてのレビューになります。

 これはそれぞれ「個人」、「東京の大蔵集古館」に所蔵された作品で、今回見逃したなら、二度と観られなかった可能性が高いです。前者は重要美術品に、後者は重要文化財に指定されていて、共に傑作といってよいでしょう。

 

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www.suntory.co.jp

 

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 久隅守景 「四季耕作図屏風 旧小坂家本」 六曲一双 江戸時代・17世紀 (上が右隻、下が左隻)

 耕作図は農民たちの働く姿を四季折々の風景や慣習を交えて描いたもので、守景はこの題材で、後に繋がっていく独自の作風を起立させていったとぼくは考えます。探幽から絵を学んだ守景でしたが、狩野派らしい優美で強い筆致は影を潜め、描かれる木々や建物は簡略化され、タッチは素朴であり、ほのぼのとした印象さえ与えます。なにより人物や動物たちの表情が素晴らしいです。狩野派はこのような絵は描きません。

 ここに現れているのは守景の独自性の筆致にほかならず、彼は庶民たちの生活を通して、単なる「題材」を超え、そこに絵心を見出しているのです。

 そして、もう一点、これは重要文化財に指定されている「四季耕作図 旧浅野家」(六曲一双)です。

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 久隅守景 「賀茂競馬・宇治茶摘図屏風」 六曲一双 江戸時代・17世紀 (上が右隻で、下が左隻)

 今回鑑賞した作品では、これが最も優れていると思いました。後期の11/11~11/29までしか出展されていません。

 右の屏風には、茶摘みの時期の宇治の春の景色が描かれ、その宇治のモチーフである、平等院、水車、染舟、布晒が描かれており、左の屏風には、大勢の客たちで賑わう上賀茂神社の初夏の神事、賀茂競馬の様子が描かれています。

 やはり簡略化された筆致は独特な味わいがあり、人物たちの佇まい、その表情が随所に渡って素晴らしいです。実に細かなところまで神経の行き届いた、最晩年の守景の代表作です。

 会期は11/29(日)までです。

 久隅守景の作品をこれだけ一度にまとめて鑑賞できるのは本当に少ないので、改めてサントリー美術館と今回の企画に拍手を送りたい所存です。