読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

第6回菊池ビエンナーレ展 現代陶芸の〈今〉 に行ってきました

美術展覧会レビュー

 

 菊池寛実記念 智美術館で開催されている「第6回菊池ビエンナーレ展 現代陶芸の〈今〉」に行ってきました。

f:id:mannequinboy:20151224184700j:plain

www.musee-tomo.or.jp

「菊池ビエンナーレ」は現代陶芸の振興を目的に、2004年から隔年で開催されている公募展で、今回で第6回を迎えます。318点の応募の中から入選した50点が、今回智美術館で鑑賞することができます。入賞作品は以下で、僭越ながら、ぼくなりの感想を添えておきます。

f:id:mannequinboy:20151224185058j:plain

 大賞 神田和弘 「繋ぐ」

 入ってすぐのところに、どん、と飾られてあったのがこの今回の大賞作です。写真だとよくわからないかもですが、なぜタイトルが「繋ぐ」かは、つぶさに鑑賞すると誰もが理解できます。内側は空洞ではなく、予想以上の厚みを持っており、にもかかわらず土の固さよりも風船っぽい膨らみが存在感を放っていて、解説では「長い枕を半分に折り曲げたよう」と書かれてありましたが、まさにそのような独特なフォルムなのです。指跡と釉薬によって作られた質感も匠の極致といえて、土の持つ生命感をぞんぶんにひきだした、素晴らしい作品だと思いました。

f:id:mannequinboy:20151224185236j:plain

 優秀賞 津守愛香 「サムライ・マーメイド」

 これはほとんど彫刻といってよい作品ですけど、写真で観るより、実際はもっと色彩が鮮やかで、兜などとても丁寧に作られています。実物のほうがぜんぜんよいです。よくあるような海外がイメージする定型的な「サムライ」を皮肉って作られた作品だそうですが、その意図の背後にあるものがなにか。とにかくこの表情といい、体の角度といい、なにより武士と人魚が一体化したという存在性から、いろんな想像性を掻き立ててやまない作品です。解説に「フィギュアでもあり、埴輪のようでもあり」と書かれてあるんですが、現代的陶芸の野心作といえるでしょう。

f:id:mannequinboy:20151224190305j:plain

 奨励賞 張惠敏(チャン・フェイミン) 「種の器」

「観る者の心を朝もやの中に引きこみ、朝陽を浴びたつゆの雫がキラキラと輝く情景のようだ」と解説された作品がこれで、実はこれは「桃の種」で、無数の種をひとつひとつ積み重ねて作られた器です。そしてこの種、よく見ると、開いたものと閉じたものがあり、つまるところ、この白い光沢を放つ造形は、どこで途切れても、どこまでつづいても構わない器であって、まさに「永遠」=「未完」の自然の美を紡ぎきだしていると思います。最も選考に難儀した作品らしいです。

f:id:mannequinboy:20151224190629j:plain

 奨励賞 若月バウマンルミ 「Form」

 これはまさに「フォルム」を問うた作品といえるでしょう。最もわかりやすい陶芸作品です。でも、立体的ですが、かなり平面で、まるで水筒みたいです。ふたつの器の真ん中辺りに薄く白いラインが入っています。色合いは微妙に変化し、うねり、に留まらない「動」的感覚があり、寄り添った様子が、やはりものとものとが関係しあって生まれる「空間美」の躍動を感じさせます。

               ※               ※

 この四つの大賞、優秀賞、奨励賞に輝いた作品、どれも素晴らしい作品だったので大いに楽しんで鑑賞しましたけれど、でもこれだと個人ブログの面白味がまったくないわけで、ここからはぼくの独断と偏見に満ちた、これもよかったんじゃないの? ぼくならこれが受賞作っていう、他に展示されていた作品をご紹介します笑。

f:id:mannequinboy:20151224190915j:plain

 入選 川合牧人 「MEMORIAL-LUCKY DRAGON」

 ぼくが今回の展示でかなり気に入ってしまったのは、実はこの作品です。まあ、いかにもぼく好みでした笑 黒い土台に無造作に塗られた白い釉薬の上に、ふたつの不思議な塔が建っています。どちらも傾き、罅割れ、焦げ跡を持っており、雰囲気がオリエンタルであると同時に、どこかしらSF的な臭いも醸し出していて、象とライオンが逆向きに配置されてある、このバランス感覚もとても意味深です。退廃的かつプリミティヴな世界観を宿したメルヘンといえます。

f:id:mannequinboy:20151224191137j:plain

 入選 岩田義實 「方」

 次に気に入ったのが、この作品で、器とも皿とも呼べない、まあ、ぼくには「椅子」に見えましたが笑、赤、青、黒が塗られたぼったりしたこの作品は、フォルムを極限にまで突き詰めた果てに作られたシンプルな思考が垣間見えて、ぼくが感じるに、まさにどんな生命をも――たとえば人間も枯葉も水も――抱きこむような凹み具合が実によく、抽象美術好きにはたまらない作品に映りました。めちゃくちゃ好きです。

f:id:mannequinboy:20151224191339j:plain

 入選 西澤伊智朗 「冬虫夏草のレクイエム」

 あと、この作品もすごくいいと思って、これ、奥の会場のいちばん端っこに置かれていましたけれど、全体が怪奇的な格好をしており、表面は罅割れているというより、明らかに干からびた姿をしている器です。まるで蜂の巣のような異様な格好なんですが、逆にその「死」のイメージから、生命の息吹を感じさせる作品になっています。なぜこれが選ばれなかったんだろう? というくらい、意義深い作品だと思うんですけど。とりわけ「現代陶芸」という意味合いにおいても、ぼくはすごくいいと思ったんです。

f:id:mannequinboy:20151224191755j:plain

 入選 村尾一哉 「白泥器」

 あと、この作品も好きでした。変形の白い器なんですけど、しっかり泥の質感を表面に湛えているのが素晴らしいです。ところどころ黄色く縁どられた染みと、線の感覚がまさしくデザイン=生命力を描き出しています。なんともいえない妖怪のような膨らみと歪みを持つ造形美もたまらないです。

               ※               ※

「菊池ビエンナーレ」は、ぼくは実は初めて訪れたので、今回美術委員の方と少しお話させてもらったんですけど、まあいろいろ結果に至るまでは喧々諤々があったらしいです。大賞を受賞された神田さんはなかなかの実力者で、もともと花器を得意とされている陶芸家さんらしく、それが発展したものが今回のこの「繋ぐ」であるらしいです。ぼくも選考委員だったら、これを大賞に選んだと思います。これはあくまでぼくの陶芸に対する考えですけど、陶芸とは、土の存在感をいかに「形」によって引き出すかにあって、その逆であってはならない、ということを常々思っています。これはまさに そのような土の生命力を引き出した抜きんでた作品といえて、独特の抽象的フォルムからは、いろんな「繋がり」が連想されもまた生まれてくると思うんです。

 あと「現代陶芸」というからには、現代性、が求められる必然性があって、そういう意味もあって津守さんのような作品の選出もされたのかなと思いましたが、解説によると、ベテランゆえに審査が厳しく選に漏れた作家作品もあるらしく、それはこの「菊池ビエンナーレ」という賞のカラーと解するしかないでしょう。実際図録の作家略歴を見るなら、どなたも二十年、三十年と陶芸を究めた方たちばかりで、なんらかの受賞歴、輝かしい実績をお持ちであって、誰が受賞でもかまわないような名品ばかりが陳列されているといってよいです。

 陶芸というと、古臭いイメージがあるかもですが、一回観てみると、違った印象をもたれるのは必至です。どうせだったら、現代陶芸から入ってみると、親近感を覚えるかもです。是非足を運んでみて欲しいです! 会期も2016年3月21日までと長いです。

 智美術館って本当に素敵な美術館です。観覧料も一般800円と安いですし、今回は1月、2月、3月と、それぞれ受賞作家、審査員、入選作家によるトークショーも、観覧料で体験するこ とができます! 実際陶芸家さんの作品も購入できます!

f:id:mannequinboy:20151224184400j:plain

f:id:mannequinboy:20151224184414j:plain

f:id:mannequinboy:20151224184425j:plain

f:id:mannequinboy:20151224184437j:plain