読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

出版社訪問日記 第四話

創作日記

 今回の話はいささか変則的。突然献本を頂戴したんですね。編集者の方から。ぼくのブログをたまたま目にしてくださったみたいで、メールをいただいたんです。献本は応募して抽選であたるのが普通ですけど。まあ、だから珍しいです。映画の試写会に呼ばれたようなものです。版元はハイパー・コリンズ社。最近社名を変更したばかりの出版社。書籍は『アルバート、故郷に帰る ―両親と1匹のワニがぼくに教えてくれた、大切なこと』で、著者は『ロケット・ボーイズ』でヒットを飛ばしたホーマー・ヒッカム・ジュニア。『遠い空の向こうに』という題で映画化されたので、知っている方も多いと思います。

 それで驚いたことがあって、作品の訳者が金原瑞人さんと西田佳子さんだったということです。

 金原瑞人さんは日本を代表する翻訳家ですけど、日本において翻訳という仕事を牽引してきた、といういいかたが正しいと思います――芥川賞作家の『蛇にピアス』の金原ひとみさんのお父さん、といったほうが読者にはわかりやすいかも――その金原先生とぼくのかつて近しかった編集者がお知り合いだったので、その話をしたら、「奇遇ですね」ということになって、「じゃあ、お会いしましょう」ということになりました。それで秋葉原にあるハーパー・コリンズ・ジャパン社に向かうことになったという次第です。

 ハーパー・コリンズ・ジャパン社は、ハーレー・クイン・ロマ ンスなんかを出版している日本支社であり、出版している書籍のすべては、恋愛やサスペンスやミステ リーなどの超どストレートの翻訳のエンタメ。ただ、担当者の方曰く、翻訳ガイブンには力を入れていきたい、ということで、将来は日本の作家の企画もしたい、ということでした。でも、現在のところはそういう日本の一般文芸作家の企画が持ち上がることはないらしく、「今回はご挨拶だけだなあ」という気持ちで訪ねました。とにかく編集者の方とはおひとりでも仲良くしたいし、顔を合わせないことにはどんな仕事もはじまらない。

 

アルバート、故郷に帰る 両親と1匹のワニがぼくに教えてくれた、大切なこと (ハーパーコリンズ・フィクション)

アルバート、故郷に帰る 両親と1匹のワニがぼくに教えてくれた、大切なこと (ハーパーコリンズ・フィクション)

 

 

 秋葉原にある会社に指定された日時にお伺いすると、メールを下さった担当の女性編集者Mさんが迎えてくださいました。ヒッカム氏の著作をいただいて、広島に金原さんや西田さんが、鰐を飼っている方の家を訪問された際のお写真などもいただきました。ちょこちょこ本や出版業界についての世間話のあと、とにかくぼくのほうからは、出版のパーティーみたいなものがあったら声をかけてください、ということと、日本の一般文芸の企画が通る場合は、是非ぼくもお願いします、と笑 それだけ伝えてきました。 

 編集者のMさんは、ぼくの角田光代さんの『八日目の蝉』のレビューを見て、ぼくのところに献本してくださったようです。ガイブン担当ですけれど、プライベートでは、角田光代さんや、伊坂幸太郎さん、西加奈子さんなんかがお好きなようで、ネットでいろいろ検索されていて、ぼくの記事に目が留まったらしいです。「ぼくが書いてもなんの影響力もありませんよ」と一応断ってはおきましたけれど、「とにかくレビューを読んでいると、本を丁寧に読まれる方で、こういう方に本を読んでもらいたいから」とおっしゃってまして、外資系の考えなのか? とにかく不思議なこともあるもんですね。日本の版元なら、まず考えられない。名のある書評家に本は配るでしょうね。

 編集者のMさん、ご多忙のところ、お時間割いてお話していただき、まことにありがとうございました。早速献本の著作拝読させていだきます! いつか一緒に書籍を作れたならいいなあ、と思っています。

 追記。

 今回のことで、ちょっと思うこともありました。まず、外資系はいいな、と笑 慣例がガチガチとなった内向きの日本出版界と違って、風通しがいいところがある。個人的には、日本の版元の半分くらいには潰れてもらってですね笑、あとは外資になればいい、と思う。そうしたら書籍が質的にも、あるいは、読み手にも書き手にも、今よりはまだいい好転の事態が訪れるんじゃないかな。「伊坂幸太郎さんなんかうちで出してくれますかね」って、編集者のMさんおっしゃってましたけれど、金や名誉で小説を書いている作家なんていませんから、是非お声をかけていって欲しいです。最初は手紙がいいかもしれませんね。とにかくチャレンジ精神に溢れている出版社だなあ、という感じがしました。その分厳しい側面もあるんでしょうけどね、もちろん社内にはそれなりに。

 あと、ブログってなんのために書いてるんだろうって常々にぼくは思ってたんですけど、こうして出版社の目に留まる場合もあるわけで、映画のレビューなんか書きまくっているブロガーのところには、映画会社から試写会のお誘いはけっこう来てるんじゃないのかな。日本の映画会社なら、やっぱりこないのかな笑 ぼくは翻訳家でもなく、原作者でもないので、今回はちょっとした捻じれ感がありましたけれど、少なくとも「ご縁」にはなります。旧型の権威主義の純文系を目指されている方はちょっとだけど、今回お邪魔させていただいたハーパー・コリンズ・ジャパン社はラノベやコミックは手掛けているので、ぜんぜん「持ち込み」は可能な感じでしたよ。チャンスじゃないですか? マジで。まあ、ダメで、ぼくのせいにされても困るけど笑