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デトロイト美術館展に行ってきました

美術展覧会レビュー

 上野の森美術館で開催されている「デトロイト美術館展」に行ってきました。会期は、2016年10月7日(金)~2017年1月21日(土)です。

 会場は、「印象派」「ポスト印象派」「20世紀のドイツ絵画」「20世紀のフランス絵画」の四つに分かれています。

 最初にいってしまいますが、まあ行かなくていい展覧会だと思います笑 日本初公開作品が15点ありますが、傑作と呼べるものはありませんでした。ぜんぶでも52点と、非常に作品数が少ない。ここからクライマックスか、と思っているところで、もう出口でした笑

 

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www.detroit2016.com

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 オディロン・ルドン 「心に浮かぶ蝶」1910-12年頃 油彩、カンヴァス

 フランスの画家、オディロン・ルドンは「後期印象派」に括られることが多い画家です。しかし、正確にいえば「象徴主義」に位置される画家で、最初は黒一色にこだわった、極めてグロテスクで内向的な絵を描いていました。晩年になって、作風が一変します。主に題材として扱ったのは、花、ですけれど、それまでになかった華やかな色彩がカンヴァスを鮮やかに彩るようになります。ゆえに、彼の作風は二分されて語られますが、基本的にはルドンの作風は変化したとは、ぼくは思っていません。「心に映ったものを描く」という意味では、彼の絵画はその後のシュルレアリスムドイツ表現主義の作家に影響を与えましたし、モネらの印象派とも通じる感性を持っていたと思います。

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 エミール・ノルデ 「ヒマワリ」 1932 油彩、カンヴァス

 ぼくの本当に大好きな画家なんですけれど、ほとんど国内では観ることができません涙。残念でなりません。ここ20年では、以前個人展が一度だけ、2004年に東京都庭園美術館で開催されましたが、なぜだかそれは彼の代表作品である油絵ではなく、水彩画展でした。

 ドイツ表現主義とは、19世紀末に起こったフランスの絵画革命の「印象派」に対抗するようにしてドイツで起こった、さらなる絵画運動といってよく、目に映るものではなく、心の内面を描こうとする絵画です。無意識の心象を曝け出すシュルレアリスムや、後の抽象画にも影響を与えるものともいってよいですが、直接の触発は紛れもなくフィンセント・ファン・ゴッホの絵画です。

 ゴッホと同じように、色彩、によってその内的な不安や心情を表そうとしたのが、ノルデで、この「ヒマワリ」は間違いなく、ゴッホの「ひまわり」へのオマージュとして描かれたものでしょうけれども、それは暗い色調に彩られて、花は枯れ果て、ゴッホが描いた激情的な生命の賛歌とは程遠い感性です。20世紀のドイツの表現主義の画家たちは、当時ナチスに「退廃芸術」として烙印を押され、ほとんどの作家たちのその作品は剥奪され、中には燃える火の内へと葬られました。 

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 オスカー・ココシュカ 「エルベ川ドレスデン近郊」 1921 油彩、カンバス

 ココシュカはエゴン・シーレと並び称されることが多い、オーストリアの世紀末画家の代表のひとりです。シーレが神経症的な線描によって、人の内的不安を描こうとしたとするなら、ココシュカは大胆な線描と、圧迫するほどの色合いで、その内面を描きだそうとしました。シーレが内向的な狂気とするなら、ココシュカは外向的な狂気でしょう。これもノルデと並んで、日本初公開作品で、観れてよかったです。

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 アメデオ・モディリアーニ 「女の肖像」 1917-20 油彩、カンヴァス

 誰もが知っている画家の画像も一点貼っておきます。エコール・ド・パリの代表格の画家であるモディリアーニ。三点ありましたが、残念ながら、どれも観たことのある作品でした。シャイム・スーチンの作品も一点だけあったんですけれど、これも観たことのある作品で、残念でした。

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 というわけで、物足りなかった感は否めませんでしたけれど、ぼくみたいに好きなアーティストがいらっしゃる方は、べつだと思います。今回ぼくが足を運んだ理由は、オスカー・ココシュカエミール・ノルデの日本初公開作品が鑑賞できると知ったからです。前者は二作品、後者はたった一作品の展示でしたが、ぼくにとっては観覧料を払う価値は十分にあるんです。ドイツ表現主義の画家たちは、ファンが少ないためか、観られる機会が少ないので、好きなアーティストがいらっしゃる方は、行ってみてはどうかな、と思います。